自身の経験と知見を強みとして活かしながら、
独自性を担保した新規事業を目指す。
広告会社の新規事業として、なぜSDGs ACTION LABOを立ち上げたのか。
私たちの価値創造の競争優位性をどのように担保していくか、を考えたことがSDGs ACTION LABO立ち上げのきっかけです。広告業界をはじめ、様々なビジネスがコモディティ化する中で、現状のビジネスが将来も通用するとは限りません。そうなったときに「電通アドギアにしか提供できない価値とはなんだろう」という思いを突き詰めたところが始まりです。
私がサントリーのプロモーションを担当しており、その経験から得たナレッジがSDGsの視点と多く重なることに気づきました。それはSDGsに取り組もうとする多くの企業に求められる知見であり、結果として、私たちはSDGsに関する一流のノウハウを迅速に蓄積できていました。
当時、SDGsに対する機運が社会で高まりつつあった中で、多くの企業がどのように取り組むか迷っていました。そこで、私たちに蓄積されたナレッジを活用しない手はないと考え、ビジネスとしてSDGsにチャレンジする「SDGs ACTION LABO」を立ち上げました。
仕事を通して競争優位性という課題をお感じになっていた。
独自の提供価値を作ろうと新規事業を立ち上げてみての手応えは。
SDGsというテーマが経営レベルの課題であるため、私たちが仕事で向き合うクライアント担当者に提案しても、企画を通すのにハードルがありました。担当者が乗り気になっても、経営サイドの方針と差異が生じることがあり、担当者レベルでは最終判断がしにくいジャンルであることに気づきました。
また、SDGsのコンサルやソリューションを提供している会社は多数存在し、その中でどのように競走優位性を確保するかが課題でした。優れた知見とノウハウはあるものの、独自性には十分ではありませんでした。
そこで、私たちにしか提供できない独自の価値を創造するために、「ReBORN LABO」というプロジェクトを企画しました。
もったいないものにアイデアを加えて使っていく、アップサイクルに着目しています。その第一弾として「ReBORN LABO PAPER」を開発しました。廃棄野菜やコーヒーガラなど、捨てられてしまうものを紙に漉き込み「混抄紙※1」として甦らせる取り組みや既存の混抄紙と連携する取り組みを、紙の専門商社「竹尾」と連携して行っています。様々なストーリーのある廃棄物を、紙として蘇らせるアップサイクルのソリューションを作りました。混抄紙に何を漉き込むかで、紙に意味を持たせメッセージを作ることができます。再生紙にも力を入れており、特定の何かに使われた紙を再生することで、同様に紙に意味を持たせメッセージを作ることができます。
廃棄物を紙にする取り組みを単体で行う企業や印刷会社はありますが、紙の専門商社と連携して大きく取り組んでいる例はあまりありません。私たちはアップサイクルの分母を大きくし、市場価値を作っていくことを目指しています。まずは、ニーズに合わせて最適にアップサイクルされた混抄紙や再生紙を、クライアントに提案・供給し、広告活動としてプリント広告や販促ツールなどに活用できるようにするところから始めます。
※1混抄紙とは:紙の原料であるパルプに異質な繊維を混ぜ合わせて抄いた紙
事業に独自性(競争優位性)を持たせることでドライブがかかりました。
今後の展望と、振り返りを、お聞かせください。
2025年にはSDGs万博とも呼ばれる大阪万博が開催されます。世の中的な機運も高まるため、提案活動を最大化させていきます。「ReBORN LABO」は、紙に着目した「ReBORN LABO PAPER」だけでなく、第2弾、第3弾と独自のソリューション作りを推進しており、すでに水面下で動き始めています。
振り返ると、与えられた仕事でもないものに、現状の延長のビジネスに危機感を感じて新規事業を立ち上げたのが始まりです。このように、やりたいことに対して会社は寛容で前向きにサポートし、挑戦させてくれました。私が止めようとしない限り、挑戦させ続けてくれます。このプロジェクトを何年も続けさせてくれるのは、本当に感謝しております。日々、その感謝の気持ちを持ちながら取り組んでいます。